酒飲み
【東京雑学研究会編】
§酒飲みはどうして「左利き」?
酒好きの人や酒が強い人のことをさして、「左利き」とも「左党」ともいう。では、どうして「右」でなく、「左」なのだろうか。
単純に、昔は酒を左手で飲むことが習わしだったから、「左利き」といったという説がある。江戸時代の「彫物の名人」と伝えられる左甚五郎から出た、という話もよく耳にする。日光東照宮の眠り猫、東京上野東照宮の龍など、甚五郎作と伝えられる彫物は全国に多数ある。龍の彫物が毎夜池におりて水を飲んだなど、甚五郎あるいはその作品にまつわる逸話も数多い。
その甚五郎が酒好きで左利きだったから、とされているが、実際には左利きであったかどうかも定かではない。しかも作品量の多さから、甚五郎は複数いたという説や、伝説上の人物だったという説もあるので、これは疑わしい。
「左利き」の語源は、実は大工や石工にあるようだ。ノミはかなり古くから使われていた大工・石工道具だ。作業にあたっては、これを左手に握り、右手にトンカチを持って、上から叩きつけて使う。そこで、大工や石工は、「ノミを持つ手」であることから左手を「ノミ手」と呼んでいた。同じ音の「飲み手」にかけ、酒好きの人や酒が強い人のことを「左利き」というようになったのだ。
佐渡の金鉱が盛んだった頃、金山鉱夫から普及したという説も有力だ。鉱夫も左手でノミを持つ。つまり、大工や石工と同じく「ノミ手」である。
一方、「左党」の「党」とは、仲間という意味で、酒はひとりで飲んでもつまらないということかもしれない。いうなれば仲間で「飲みにケーション」しようというわけだ。こればかりは、古くから変わらない習慣である。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670385 |