サービス
【東京雑学研究会編】
§相手を攻撃するのになぜ「サービス」なのか?
スポーツには、テニス、バドミントン、バレーボール、卓球のように、相手との間でボールやシャトルを打ち合って得点を競うゲームがある。得点を競いつつ、打ちつ打たれつを続けて、長くラリーを楽しむことができるゲームだ。
これらの競技においては、攻撃側が最初に打つ球を「サービス」または「サーブ」という。英語の「サービス」には、「奉仕する」「世話をする」あるいは「勲功」や「公共的な事業」の意味がある。また、「サーブ」は「人に仕える」「勤める」「誰かのために働く」という意味。それなのに相手を攻撃する第一球をなぜ「サービス」や「サーブ」というのだろう。
それを知るには、スポーツの歴史を少し振り返って、近代スポーツが誕生する以前に楽しまれていた球技やラリーゲームの意味と性格を知る必要がある。
例えば、テニス。このゲームの前身は、フランス革命以前に「ジュ・ドゥ・ポーム」と呼ばれ、王侯貴族たちに楽しまれた球技であった。この球技で最初のボールをコートへ投げ入れたのは、彼らの従者すなわち、サーバントだった。主人が打ちやすいボールを投げ入れる「サービス」を行ったのである。今もラリーゲームの最初の打球を「サービス」と呼ぶのはこのためである。
これからも解るように、ラリーゲームには元来攻撃的な性格はなく、むしろ相手が打ちやすい球を送って、長くラリーを楽しむことが目的であった。相手が打ち返しにくい球を送るのは、マナー違反であり、自分のバッドマークであった。もし、相手からの球を打ち返せなかった場合、それは自分のミスであって、しかも、相手の得点になるという考えもなかった。日本の「蹴鞠」と本質的に似ている。
テニスが攻撃型に転じたのは、近代スポーツとして生まれ変わってからのことである。そのルールは、競技性が重視され、合理化され、遊びの要素を失ってしまった。そして、「サーブ」や「サービス」も、単なる用語となったのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670371 |