考える動作
【東京雑学研究会編】
§上を向いて考えてしまうのはなぜ?
「あの本はどこにしまったんだっけ?」と、古い本を取り出そうとして、書棚を眺めるのではなく天井を向く。そんなところに本があるわけでもなく、置き場所のメモもしているはずもないのに、上を向く。
こんなふうに、忘れたことを思い出そうとしたり、考えごとをしたりするとき人が天を仰ぐのは、「よけいなものが目に入らないようにするため」と、神経生理学の専門家たちは分析している。雑念が入らず、思い出したり考えたりすることに集中するためだ。
たしかに、書棚を見ながら探すと、無関係な本のタイトルが次々に目に入って、懐かしくなって取り出したりしそうだ。時間もかかるし、かんじんの必要な本探しを忘れそうだ。だから何もない天井を見る。
しかし、ほかのものに気を取られたくないのなら、横を向いても下を向いてもいいはずだ。たしかに本探しならそれでもいいが、誰かと会話中のことだったら、横を向けばそっぽを向いたように受け取られるし、下を向けば困っているように見えるかもしれない。そういう心理が働くので無難な上を見るという行為を、無意識に選ぶのだそうだ。
では、集中のために、目をつぶってもいいのではないか、という気がするが、それには医学的見地からの分析が答えてくれる。上を向くと首のツボが刺激され、脳への血液循環がよくなり記憶の回復が促進され、思考力が強化されるのだそうな……。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670221 |