親知らず
【東京雑学研究会編】
§「親知らず」はなぜ生えてくるのか?
人間の歯は、上あご下あごそれぞれに一六本ずつあり、いちばん奥の大きな四本には「親知らず」という妙な名前がついている。学問的には第三大臼歯と呼ばれるそうだが、この四本の歯は生える時期がかなり遅く、しかも、生え方にいささか問題がある場合が多い。一体この歯は、どういう歯なのだろう。
人間の永久歯は、だいたい一二歳頃までに、親知らずを除く二八本がすべて生えそろう。ところが、第三大臼歯だけは、成長してしまって、親が知らない頃になって生えるので、「親知らず」と名づけられたそうだ。また、知恵がついてから生えてくるので、「智歯」とも呼ばれる。
親知らずは、第三大臼歯という字のごとく、食物を噛んだり、すりつぶしたりするのが役目。人間は草食動物型の歯を持っているのである。
原始時代、人間は、硬い木の実や生の肉など消化しにくい物を、よく噛み、すりつぶすようにして食べていた。だから、歯の数も多い方が便利で、あごの骨もよく発達していた。彼らのあごの奥には、親知らずのための十分なスペースが用意されていたのである。その場所に、上下が正しく噛み合う四本の親知らずが生えていた。
ところが、現代に近づくにつれ、食べ物が調理され、どんどんやわらかくなって、噛む必要がなくなると、あごが小さくなり、噛む力も弱くなって、親知らずが退化し始めた。
これが、親知らずが変な生え方をする原因である。遅れて生えてくる親知らずのためのスペースが小さくなった結果、横に生えたり、逆方向に生えたりするのである。
いちばん奥にあり、しかも、本来の位置に生えていない親知らずは、歯磨きもしにくく、不潔になりやすい。虫歯になりやすい歯といえる。歯の健康は身体全体の健康につながるので、三二本すべてが丈夫な歯であり続けるよう、現代人の食生活を含む生活全般を見直さねばならないようだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670145 |