おやじ臭
【東京雑学研究会編】
§おじさんのくさい臭いはどうしてするのか?
満員電車の中や、会社のロッカー室などにたちこめているムッとするような不快な臭い。特に若い女性にいやがられる「おじさんの臭い」である。この臭いは加齢臭とも呼ばれ、男女とも四〇歳くらいから徐々に増え出す臭いなのに、「おじさんの臭い」とレッテルをはられてしまったのは、不幸なことである。
三〇代までの男女の皮脂にはほとんど検出されないが、中高年になると、ある種の脂肪酸が皮脂の中に多くなるという。これがあの臭いの原因らしい。この脂肪酸が酸化したり、皮膚に付着している雑菌により分解されると、「ノネナール」という物質が生まれる。この物質こそおじさん、おばさんの臭いの正体なのである。
ノネナールは、特に胸や背中に多く発生するという。女性の場合、昔からオーデコロンや香水を愛用する人がいるから、気になることはなかったが、男性の場合、服装に無頓着で「着たきりスズメ」の人も多かったから、背広や下着にしみついたこの臭いが、周りの女性たちを閉口させていたのだ。
化粧品会社もこの臭いに注目し、近頃ではいろいろな体臭ケアの技術を開発、商品化している。ボディシャンプー、乳液、スプレータイプのものなど、手軽に入手できるものが増えた。脂肪酸の酸化を防ぐ抗酸化剤と抗菌剤が配合されている。
それほど臭ってはいないのに、自分の臭いを気にしすぎる「自己臭恐怖」の人が多いと言われているが、無臭の人間なんてありえないのだから、あまり気にせず、ひと風呂浴びればいいのだ。臭いはすぐに消える。普通に清潔にしていれば十分なのである。
ちなみに、最近の若い人たちが、あまりにも加齢臭を気にすることには、社会的な背景があると言う人がいる。それは、核家族化が進み、高齢者と接する機会が乏しくなったため、おじいちゃん、おばあちゃんの体臭に慣れていないということらしい。おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に住んだことのある人の中には、「おじいちゃん、おばあちゃんの香り」という人もいるのだから。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670144 |