スペインワインの基礎知識
"ぶどう栽培面積は世界第1位、ワイン生産量はフランス、イタリアについで世界第3位でありながら、「眠れる獅子」と呼ばれていたスペイン。しかし1990年以降の品質向上は顕著で、国際的に注目されるワイン産地が増えている。例えば4人組と呼ばれる醸造家が刷新をはかり、みごと高級ワイン産地への革新を遂げたプリオラートなどはその代表例である。もともとスペインは降雨量が少なく日照時間が長い。毎年の気候が安定しているのでヴィンテージに左右される危険が少ないなど、ワインづくりにおいて恵まれた環境にある。そうした気候や伝統品種が持つ潜在能力の高さも再認識されてきて、今後ますますの成長が期待されている。
格付け
EUのワイン法改正にともない、スペインワインは2009年8月より、IGP(保護地理的表示)とDOP(保護原産地呼称)の2つに大別され、さらに各々について下記のカテゴリーに分類される。
IGP
1:ビノ・デ・メサ
一般のテーブルワイン。
2:ビニェードス・デ・エスパーニャ
2006年、安価な輸入ワインと区別するために導入されたスペイン産広域のテーブルワイン。
3:ビノ・デ・ラ・ティエラ
DOPの認定地域外の特定の産地で栽培されたぶどうを使い、地域の特性を持つ地酒的ワイン。
DOP
4:VCIG
地域名称付き高級ワイン。この分類で5年以上実績のある産地はDOへの昇格申請ができる。
5:DO
現在60以上の地域が認定され、スペインの高級ワインの核的なカテゴリーにあたる。本書で紹介している大半のワインがこの分類に属する。
6:DOC
DOよりさらに厳しい規定に合格した高品質ワイン。現在認定されているのはリオハとプリオラートのみ。
7:VP
DOやDOC地域外も含め、限られた面積の単一の畑のぶどうだけからつくられた高品質なワインに認められる単一ぶどう畑限定高級ワイン。現在9件。
※スペインワインは歴史的に樽熟、瓶熟を長く行う傾向があるため、VCIG~VPに属するワインを対象に、熟成度による分類もある。短期熟成⇒長期熟成の順に、クリアンサ⇒レセルバ⇒グランレセルバと表記される。
おもな産地
【リオハ】
ボルドー伝来の伝統的な小樽(おもに古樽)による長期熟成を特徴とした昔ながらの製法にこだわるクラシックタイプと、バニラ香が強いフレンチオーク樽での熟成がおもなモダンタイプに分かれ、新旧が入り混じる伝統産地。どちらにも属さない中間タイプもある。テンプラニーリョを主体とした赤ワインが中心。おもにアルタ、アラベサ、バハの3地区に分かれる。
【ペネデス】
カバというスパークリングワインの大半がこの地域でつくられる。
【プリオラート】
一時は衰退していたが、4人組の男により、地元品種をいかした高級ワイン産地として変身を遂げた産地。
【ルエダ】
ベルデホ種からつくられる白ワインの産地。
【リベラ デル ドゥエロ】
ティント・フィノ主体につくられる高級赤ワイン産地。リオハと並びスペインの高品質ワイン産地のリーダー的存在。
【ビエルソ】
伝統品種メンシアによる個性豊かな赤が注目される、21世紀になって登場したワイン産地。
【リアス バイシャス】
ルエダと並びスペインを代表する白ワインの産地。主要品種はアルバリーニョ。
おもな品種
■テンプラニーリョ(赤)
スペインを代表する赤の品種。地域によって名前を変え、「ティント・フィノ」「ウル・デ・リェブレ」「センシベル」などの呼び方もある。繊細で香り豊か、酸もタンニンも豊富なので長期熟成にも適した品種。スペインの高級赤ワインにこの品種を原料にしたものが多い。
■ガルナッチャ(赤)
フランスではグルナッシュといわれる品種で、スペインが原産。厳しい環境に強く、最近、研究が進んで力強さを備えた高品質なワインが数多く生まれている。
■カリニェナ(赤)
別称マスエロ。フランスではカリニャンの別称で栽培される。酸とタンニンが豊富で長期熟成が可能。
■メンシア(赤)
あまり知られていない品種であったが、ビエルソの赤ワインにより一躍有名になった。
■パレリャーダ/マカベオ/チャレッロ(白)
いずれもおもにカタルーニャ州で栽培され、発泡ワインのカバをつくるための主要三大品種となっている。
■ベルデホ(白)
ルエダの白ワインに使われる品種。なめらかでボディもしっかりあり、香りも豊かな味わいの白を生む。
■アルバリーニョ(白)
リアス バイシャスの白ワインに使われる品種。"
| 東京書籍 (著:熊野 裕子) 「ワイン手帳」 JLogosID : 8538789 |