南イタリア
南イタリアに入ると、中部や北部で栽培されていたぶどう品種はほとんどみられなくなり、南部イタリアの品種が繁栄するようになる。南部の傾向として、かつては樽売りの日々が続き、質より量の時代もあったようだが、近年、量産ワインから離れ、伝統品種をいかした質の高いワインがより多くみられるようになった。
例えば、南イタリアでは数少ないDOCGワインのひとつ「タウラージ」の主要品種はアリアニコである。ギリシャから来たと伝えられるこの品種は南イタリアですでに紀元前6世紀ごろには栽培されていたという長い歴史を持つようだが、評価が高まりタウラージとしてDOCGに昇格したのは1993年のこと。またタウラージが属するカンパーニャ州の隣のバジリカータ州でも、このアリアニコ種を使った「アリアニコ デル ヴルトゥレ」というワインが生産されており、こちらのワインは1971年にDOCに認定されている。南イタリアならではのやわらかなボリューム感に満ちた味わいが魅力的だ。
靴の形をした本土に蹴飛ばされるような位置にあるシチリア島のワインもまた独特である。ネロ ダーヴォラをはじめ、島独自の伝統品種をいかしたワインづくりに磨きがかかり、他所の高名なワインに媚びたところのない独自性を発揮している。
| 東京書籍 (著:熊野 裕子) 「ワイン手帳」 JLogosID : 8538770 |