神宮外苑
【じんぐうがいえん】
■17 神宮外苑の並木道が美しいわけ…憩いの場に秘められた歴史の足跡
東京都港区の神宮外苑にある銀杏並木は、秋になると、黄色に転じた銀杏の葉に斜陽が注ぎ、路全体が黄金色に染まって、その美しさはたとえようもない。並木路は、青山通りから真っすぐ軟式野球場の噴水まで伸び、球場の先には聖徳記念絵画館がそびえ立つ。絵画館は、中央にドームを持つ花崗岩で外装された白亜の殿堂で、そこへ続く銀杏並木の風景は、まさに一幅の絵である。
1924年、神宮外苑の完成に先立って、この並木路は造られた。銀杏の親木は新宿御苑のもので、ここから採取したギンナンを代々木の宮内省南豊島御料地内で発芽させ、1600本の苗木のうちから厳選して、ここに植樹したのだという。現在、外苑の銀杏は146本、樹齢は80年を数え、最大樹高24メートルに及ぶ。
この街路は、日本の造園家の草分けでもある折下吉延博士によるもので、そこには博士のある工夫が隠されている。気づいた人は少ないだろうが、よく見ると、青山通りに近づくほど樹の背が高くなっている。その差は最大7メートル。つまり、樹木を下り勾配に配置するという遠近法を用いて、路に奥行きと広がりを与え、見事な景観を作り上げたのだ。
明治天皇とその后妃(昭憲皇太后)の遺徳を偲ぶためにつくられた神宮外苑であるが、それ以前は陸軍の青山練兵場であった。明治天皇は、しばしばここに臨御して観兵式をおこなっており、いまでも外苑内には「御観兵榎」なる古樹(現在は2代目)が存在する。この榎の西前方に天皇の御座所を設けたことからついた名である。
| 日本実業出版 (著:河合敦) 「日本史の雑学事典」 JLogosID : 14625133 |