東京大学
【とうきょうだいがく】
■12 東京大学で学位授与式ボイコット事件発生!…退学者145名の姓名が新聞紙上で発表される
1883年10月27日、この日は東京大学の学位授与式。だが、授与式に出席した学生は、医学部を除き、ほとんどいなかった。学生たちは、日暮里に遠足へ出かけてしまっていたのである。
夕方、大学の寄宿舎へ帰ってきた彼らのなかには、酒に酔っ払っている者も多く、やがて寄宿舎の廊下や食堂で大暴れを始めた。その人数は百数十人に及び、まるで暴動のような状況になり、ようやくそれが沈静化したのは、午後10時過ぎだったという(明治16年事件)。
なぜ、学生たちは暴れたのか?
それは、これまで夜に挙行されていた学位授与式が昼間に変更されたことへの不満が主因だった。とくに当時は、「男は粗暴なほうがカッコイイ」という風潮があり、それが暴動に拍車をかけたようだ。
ただ、この時代の大学生は、いまの大学生とは違う。国民の1%も大学にいけない時代であり、なおかつ東大は最高峰である。卒業生のほとんどは、国家の官僚になる超エリートたちだった。大学側にとっては大きなショックだったろう。
だが、大学側は毅然たる態度で学生たちに臨んだ。騒動に参加した学生145名をすべて放校処分にし、なおかつ東京府(現在の東京都)は、各郡区役所や学務委員(現在の教育委員のようなもの)に、「暴動に参加した者を私立学校へ入学させてはならない」という厳しい通達を出したのだ。
さらに驚くことに、当時の有力新聞の一つである朝野新聞は、退学処分になった学生全員の実名を新聞紙上で公表したのである。
| 日本実業出版 (著:河合敦) 「日本史の雑学事典」 JLogosID : 14625128 |