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日本史の雑学事典第5章 政(まつりごと)の巻 > 江戸時代

台所役人
【だいどころやくにん】

■9 将軍様の口に食べ物が入るまで…江戸城台所役人の意外な役得とは?
 にわかには信じがたいが、江戸城内では、将軍とその正室2人のために、毎食100人以上の役人が料理をつくっていた。こうした人々を総称して「台所役人」と呼ぶ。
 調理師の代表が御広敷膳所台所頭で、200石の御家人が任命され、役料は100俵で定員は2名となっている。その下には、御台所人が数十人つく。彼らの身分はとくに問われることがなく、料理の腕が確かなら採用となる。
 将軍の食事を賄う代表が御賄頭で、定員は2~4名、こちらの身分は旗本だが、石高は御広敷膳所台所頭と同じ200石だった。ただ、役料は200俵で、料理を飾りつけるお膳や椀・箸などを主に担当した。やはり、その部下の多くは、身分を問われることがない。
 おもしろいことに、将軍と正室には、まったく同じ食事が10食用意されるである
 そのうち2食は、毒味によって消費されるためにつくられる
 まず、料理ができると、台所役人が1食分を分担して食べる。もしも食事に異物が混入していたり、不都合があったら、台所役人全員の首が飛ぶゆえ、小石などが混ざっていないかと、米粒一つ一つまで調べたというから驚いてしまう。
 しばらくして異常がなければ、残り9食を御膳所という部屋へ持っていく。
 料理はそこで温め直され、御中臈(大奥の女中)によって、そのうち1食が再び毒味されるである
 そして残った8食が将軍と正室のもとへ運ばれる。
 ちなみに、将軍とその正室が食事を共にすることはほとんどなく、たいてい別々の部屋で、それぞれ食べたようだ
 将軍の前に膳は1つ。残り7食分は隣室に置いておく。殿中は広い。どんな熱い汁物でも、将軍の手元に届く頃にはさめてしまっていたと伝えられる
 そして、将軍が魚に一箸つけて口に含むと、「お代わり」と側近の者が言い、隣室にある新たな魚と交換する。ただし、これを7回も繰り返したわけではなく、お代わりは1度だけで、それ以上は礼儀にはずれるとされていた。
 可哀想な将軍である。もちろん、これでは腹もいっぱいにならなかったろうから、ご飯は3杯まで食べることができたという。
 いずれにしても、将軍の食事のたびに大量の残飯が出ることになるわけだ。何とも無駄で、もったいない気もするが、そのままゴミとして捨てることはしない。台所役人たちの腹にしっかり収まるのである
 おいしい思いは、これだけではない。
 毎日毎日、将軍の台所には、全国から新鮮な食材や高価な珍味が山のように入荷されるところが、こうした素材は極上部分のみが使われるため、残りの大半は使われずに余ってしまうことになる。
 もちろんこれも、無断にはしない。台所役人が捨てずに自宅へ持ち帰り、その食材を使って、弁当をこしらえた。自分用ではない。売るためにである
 彼らは余った食材でたくさんの弁当をつくり、江戸城内の役人たちに売ったのだ。
 最高の食材を使った、いわば「将軍様の弁当」ゆえ、役人たちは喜んで買ったと言われる。何ともすごい役得である




日本実業出版 (著:河合敦)
「日本史の雑学事典」
JLogosID : 14625060


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出版社:日本実業出版社[link]
編集:河合敦
価格:1,404
収録数:136語
サイズ:18.6x13x2.2cm(四六判)
発売日:2002年6月
ISBN:978-4534034137

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