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日本史の雑学事典第5章 政(まつりごと)の巻 > 江戸時代

鳥見
【とりみ】

■10 幕府の職制にあった「鳥見」とはどんな役職か?…いまも昔も変わらない「役人体質」
 江戸時代には、ちょっと現代の常識では考えられないような珍妙な役職が少なくない。「鳥見」もその一つであろう。
 いまの人は、きっと「鳥見」と聞いても、いったい何を業務としているのか、余りに妙なネーミングで想像がつかないだろう
 でも、この役職は、字面のまんま、「鳥を見張る」のが仕事なのである
 徳川家康は、生涯を通じて鷹狩りを非常に好んだ。その影響で、歴代将軍の多くが、この鷹狩りという遊び(スポーツ)に興じた。
 江戸近郊には、将軍一人のために設けられた鷹場がいくつもある。とくに品川、目黒、中野、葛西、戸田、岩槻に置かれた鷹場を見張るのが「鳥見」の役割だった。
 鳥見役人たちは、鷹の標的になる雀や鴨、鶴や雁の動静や飛来状況を常にチェックするとともに、密猟者の警戒をおこなった。もし、そうした不届き者が現れたら、これを逮捕するのも、彼らの重要な役目であった。 
 鳥見は、何と世襲制であった。頂点に組頭(2名)がいて、その下で22名の鳥見役が働く構造になっている。給料は悪くない。80俵5人扶持で、そのほかに18両が支給された。
 鳥見の業務にはそのほか、鳥モチを使って毎日10羽の雀を捕まえるという仕事もあった。これは、将軍が鷹狩りで使う鷹たちの餌を確保するためである
 雀の捕獲は、鷹場に限らず、さまざまな場所でおこなわれた。
 ときには、他藩の大名屋敷の敷地内まで、雀を追いかけて入り込むこともあった。
「幕府の鳥見である。雀が屋敷に入り込んだので、邸内へ入れさせてもらうぞ」
 そう言えば、相手は公儀ゆえ、諸藩の役人はとても拒否できなかった。
「わざわざ大名屋敷に入った雀を捕まえる必要などないではないか。雀なんて、どこにだっているはずなのに」 
 そう思うのは、浅はかである。実は、鳥見役人にとって、雀取りは名目に過ぎない。屋敷の敷地内へ侵入することこそが、鳥見の真の目的なのである
 屋敷内の構造がどうなっているのか、何か怪しい策謀を企んではいないか、そういった諸々のことを探索するために、大名屋敷にわざと入り込むのだ。
 いわば、現代の会社で言えば監査役、料理店にとっては保健所の職員のようなもの。つまり、隠密の仕事も兼務していたのである
 同じように、雀を取ることを口実にして、農村や神社、仏閣へも入り込み、これらの隠密行動によって、地理や地形を詳細に調査し、地図を作り上げていったとも言われている。
 いずれにしても、こうした権限を持っていたことから、大名屋敷へ入るぞと脅して、屋敷の者から賄賂を取ったり、大きな音を出して雀を驚かせたと難癖をつけては、庶民から金をせびったりする不心得者も出てきたため、鳥見の評判はすこぶる悪かった。
 また、先に述べたように、鳥見は1日10羽の雀がノルマだったが、それ以上の収穫があったときは、雀を他藩へ売りつけて、自分の懐を肥やしていたとも言われる。
 役人の不正は、いまに始まったことではない、という典型だろう




日本実業出版 (著:河合敦)
「日本史の雑学事典」
JLogosID : 14625061


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出版社:日本実業出版社[link]
編集:河合敦
価格:1,404
収録数:136語
サイズ:18.6x13x2.2cm(四六判)
発売日:2002年6月
ISBN:978-4534034137

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