埴輪
【はにわ】
■1 埴輪は何の目的でつくられたのか?…身代わり、境界、お供え物、確定しない用途の謎
古墳を発掘すると、必ずといってよいほど出土する遺物がある。それが埴輪だ。
埴輪は素焼きの焼き物で、筒状になっている円筒埴輪から始まり、やがて人間や動物、モノをかたどった形象埴輪へと分化していく。とくに形象埴輪は、古墳時代の人々の暮らしがよくわかるので、たいへん貴重な遺物である。
こうした埴輪の出土数は、数え切れないほど多い。にもかかわらず、何の目的で墓の上部に埴輪というものが並べられたのかが、実ははっきりと確定していないのだ。ちょっと意外に思える。
ただ、いくつか説はある。
たとえば『日本書紀』は、殉死代償説をとる。垂仁天皇の弟が没したさい、側近の者たちも一緒に生き埋めにしたところ、彼らはなかなか死ねず、土のなかからうめき声が数日間続いたという。このため垂仁天皇は、殉死という風習を廃止しようと思い、これに代わる妙案を部下に問うた。
すると、相撲の元祖としても有名な野見宿彌が、私に任せてほしいと言い、出雲の土部100人を使役してつくったのが埴輪だというのである。
そのほか、埋葬者が死んでから、あの世でもちゃんと生活できるように埴輪をつくったのだとか、古墳の境界を埴輪の列によって表わしているのだとか、古墳が崩れないように土留めとして埴輪があるのだというように、さまざまな説が存在する。また、埴輪は死者に対するお供え物に違いないとする人もいる。
だが、近年は、埋葬者の葬送の儀礼を再現したものだという説がかなり有力になってきている。
| 日本実業出版 (著:河合敦) 「日本史の雑学事典」 JLogosID : 14625000 |