時間が過ぎ去るのでも人生が過ぎ去るのでもなくて両方一緒に過ぎ去っているから実は何ひとつ過ぎ去って
【名言名句】
時間が過ぎ去るの
でも人生が過ぎ去るのでもなくて両方一緒に過ぎ去っているから実は何ひとつ過ぎ去っていないのではないかという気がする
【解説】
人生は過ぎ去る。今という時間は再び還ってくることはなく、出会った数だけ別れが訪れるのだ。しかし、哲学者はこのようにいい、「私がこの子と出合って、この子の思い出とともに死に、この子も私の思い出を抱いていつの日か死ぬ。私もこの子も、それを知る他の人びともだれひとり居なくなっても、私とこの子が一回こっきり出合って友情を結んだというこのこと自体は、永遠に失われることがないのではないか」と続ける。人生とは、ただ自分が生きたということだけではないのかもしれない。
悠久の時間の流れに浮かぶ自分の存在をそのようにとらえ直すとき、今この一瞬がなおかけがえのないものに思えてくるのではないだろうか。
【作者】池田晶子
【生没年】1960~2007
【職業】哲学者
【出典】『帰ってきたソクラテス』
【参考】池田は哲学的な問題を専門用語を使わず、読みやすいエッセイとして表現するユニークな在野の哲学者だった。『帰ってきたソクラテス』は初期の代表的な著作で、ソクラテスを交えた複数の人物がさまざまな社会問題について会話をする形式でつづられている。この言葉は老人とその孫がソクラテスとともに人生について考える対話からとっている。
| あすとろ出版 (著:現代言語研究会) 「名言名句の辞典」 JLogosID : 5450163 |