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東洋医学のしくみ6章 東洋医学の現状と将来 >

東洋医学の医療資格
【とうよういがくのいりょうしかく】

東洋医学の医療資格と日本の現状

◆東洋医学を問われるのは鍼灸だけ
 中国には現代医学の医師資格だけでなく、東洋医学の中医師の資格もあります。さらに、その両方を学んだ中西結合という3種類の医療が、それぞれの持ち味を発揮しながら対等の立場で仕事をしています。
 日本ではどうでしょうか。東洋医学の知識と技術が問われる日本の医療資格には、鍼師と灸師があります。これは「あんま、マッサージ、指圧師、はり師、きゅう師などに関する法律」(略して「あはき法」と呼ぶ)に基づく国家資格で、鍼灸専門学校で3年間学んで卒業すると国家試験の受験資格が得られます。
 鍼師と灸師は別の資格ですが、試験科目の9割は共通しており実技試験もないので、ほとんどの人は両方の資格を取得します。実技試験がない理由は、実技の習得を鍼灸学校での授業にまかせているためで、知識だけで資格が取れるということではありません。ただし、どういう内容の授業を行っているかによって、学校間格差が出る可能性はあります。
 同じ「あはき法」に基づくあんま・マッサージ師の国家資格の場合は、試験に東洋医学の問題が出されることがほとんどないので、少なくとも資格を得るだけのために東洋医学の勉強する必要はありません。
 なお、東洋医学のもう一つの柱である漢方薬ついては、専門の資格自体が存在しません。日本の医療資格で、東洋医学が必須科目となるのは鍼灸師だけなのです。

◆医師なら知識ゼロでも針を打てる
 漢方薬の専門資格が存在しないのなら、町にある漢方薬局はどういう人がやっているのか大いに気になるところです。薬剤師の資格を持っている人、というのがその答えです。
 現代医学の薬にしろ漢方薬にしろ、薬剤師がいなければ薬局を開くことはできません。鍼灸師がいくら漢方薬の勉強をしていても、その資格だけで漢方薬を処方することはできないのです。
 漢方薬局の薬剤師が、きちんとした漢方薬の知識も持っているなら何の問題もありません。しかし、薬剤師国家試験に生薬学はあっても漢方薬の科目はないのです。つまり、東洋医学の知識がなくても薬剤師でありさえすれば、漢方薬を販売できるということです。
 医師の資格を持っていると、さらに自由度は大きくなります。医師ならば漢方薬の処方はもちろん、鍼灸を使って患者を治療することさえ可能なのです。
 もっとも、以上は可能性の話であって、実際には知識のない領域に手を出そうとする薬剤師や医師はいないでしょう。やる以上は一定の知識を身に付けていると思います。
 しかし、一方で漢方薬の製薬会社が業績のアップを目的に、現代医学の病名に合わせた安易な処方集を作って、医師に利用を促してきたということもありました。今はかなり改善されてきてはいるものの、その安易さが原因で多くの副作用生まれたのも事実なのです。
 また、今のところ日本の医師国家試験には、東洋医学の科目はまったく入っていません。2002年に、ようやく文部科学省が正式に漢方の科目を授業に取り入れることを決定しましたが、試験に関してはまだはっきりしていません。




日本実業出版社 (著:関口善太)
「東洋医学のしくみ」
JLogosID : 5030102


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 日本実業出版社「東洋医学のしくみ」

出版社:日本実業出版社[link]
編集:関口善太
価格:1,620
収録数:115
サイズ:20.8x14.8x1.6cm(A5判)
発売日:2003年7月
ISBN:978-4534036179

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