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東洋医学のしくみ5章 鍼灸と気功の世界 >

針治療②
【はりちりょう】

お灸や指圧、按摩も基本は針治療と同じ

◆もともと灸は冷えのための治療法
 鍼灸と一組の言葉で呼ばれるくらいですから、灸も中国から日本に伝えられた東洋医学の治療方法です。ただし、日本で行われている灸の技術はやや未熟のように思えます。
 たとえば、灸では艾(もぐさ)のひねり方や大小、燃やしている時間の長短などで補法と瀉法を使い分けるのですが、日本では多くの場合、どの程度使い分けているのか、どのような効果を目指しているのかがはっきりしていません。
 また、すべての症状を灸で治療しようとするところにも無理があります。もともと灸は「熱の刺激を経絡に伝えて温める」という作用がメインですから、寒証(冷えの症状)に効果が大きく、熱証にはあまり使いません。熱タイプの証に灸を行うのは難しく、トラブルのもとにもなりかねないのです。
 とくに近年は、地球温暖化の影響もあって日本の気候は亜熱帯に近くなってきていますから、熱性の病証が非常に多くなってきています。つまり、灸だけによる治療は、どんどん行いにくくなっているのです。

◆針のサポートとして灸で温める
 中国の中医病院でも、鍼灸科で灸治療を行います。ただ、あくまでもベースは針治療で、灸はそのサブ的な位置づけになっており、「灸頭針」という針の頭に艾をつける方法が主な治療になります。針の「ひびき感」に加えて、必要な場合だけ灸の温度をプラスするというわけです。
 針の熟達者になると、針だけで患者の体温を上げたり下げたりすることが可能になります。体温を上げるための「焼山火法」、下げるときの「透天涼法」と呼ぶ技術が伝えられていますが、実際にその技を使える名人は中国にも百人足らずしかいません。
 そこで普通の鍼灸師は、温めた方がいい証に対して、焼山火法を行うかわりに灸で温めるのです。

◆中国の推拿と日本の指圧
 指圧や按摩もツボや経絡を刺激するものですから、東洋医学の流れをくんだ治療法であることは間違いありません。中国では按摩とか指圧ではなく「推拿」と呼びます。中医大学には漢方薬を学ぶ中医内科と鍼灸・推拿科があり、病院には鍼灸科と別に推拿科があります。
 推拿の技術には指圧と似た部分もありますが、指ではなく拳の掌底を使うとか、オイルを使って摩擦するなどさまざまな手技のバリエーションがあり、証に応じて使い分けられます。
 これに対して日本の指圧にはいくつかの流派があり、それぞれに日本独自の手技があります。推拿とは別に発達した治療方法といってもいいでしょう




日本実業出版社 (著:関口善太)
「東洋医学のしくみ」
JLogosID : 5030101


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 日本実業出版社「東洋医学のしくみ」

出版社:日本実業出版社[link]
編集:関口善太
価格:1,620
収録数:115
サイズ:20.8x14.8x1.6cm(A5判)
発売日:2003年7月
ISBN:978-4534036179

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