プリクラッシュセーフティ
衝突(しょうとつ)安全装置を装着した自動車が人気だ。バスの場合、2014年(平成26)にその装着が義務付けられるという。
衝突時の速度を抑え、衝突被害の軽減に寄与(きよ)するシステムを、プリクラッシュセーフティー(衝突被害軽減ブレーキシステム、略してPCS)と呼ぶ。
2012年(平成24)、富士重工がそのための装置「アイサイト」を開発したところ、搭載車の購入者が過半数を占めたという。
搭載には10万円以上の出費が必要だが、それ以上に、ドライバーは安全を求めているのだ。
高齢社会を迎え、不注意による痛ましい事故が増える中、こうした安全機能は必須だ。
アイサイト機能の心臓部はステレオカメラユニットである。
人と同じく左右二つの「目」を有(ゆう)し、その情報をもとに道路の状況を判断する。
左右のCCDカメラは視差(しさ)により前方の対象物との距離を測るためのものだ。
近いものほどズレが大きく、遠いものほど小さくなるという視差の特性を利用している。
しかし、単に遠近を判断しただけでは使い物にならない。
道路の白線や植え込み、標識、歩行者や車、自転車を識別しなければならないのだ。
そこで求められるのが高度なパターン認識機能である。
また、夜、雨、雪の日には、道路は晴れた日中と大きく視界が異なる。
実用化するには、こうしたさまざまな状況に対応できなければならないのだ。
アイサイトの開発に20年以上を要したというのも合点(がてん)がいく。
富士重工のアイサイト以外にも、衝突防止機能の開発は進められているが、その多くはミリ波レーダーを利用する。
ミリ波とは波長が数ミリの電波をいう。
この電波を放出し、反射して戻ってくる波形によって、障害物の有無や速度距離を測る。
要するに、船や飛行機で一般化しているレーダーシステムの自動車版だ。
夜間や雨天でも正確で、物体の存在を検知して距離を測定することにかけては高い精度を期待できる。
しかし、電波の性質上、物体の形状をはっきりと捉(とら)えられず、コンピューターがパターン認識に苦労する。
また、至近距離のものの検知が苦手、高価などという欠点もあるが、これからの標準技術と目されている。
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」 JLogosID : 8567121 |