ヨット
飛行機の時代にあってもなお、水上を帆走(はんそう)するヨットには胸躍るものがある。ヨットはなぜ逆風の中でも進めるのだろうか。
大海原を航海するヨットの雄姿はロマンをかき立てる。
風に大きな帆(ほ)をふくらませて走るその姿に、古来(こらい)多くの人が虜(とりこ)になった。
そんなヨットは、ディンギーとクルーザーに大別される。
ディンギーはキャビン(船室)のない小型のヨットで、1~2人で操るのが一般的。
近海でマリンレジャーを楽しむのに向いている。
一方、クルーザーにはキャビンがあり、寝泊まりできる設備が付いていて、遠洋で航海を楽しむのに向いている。
ところで、ヨットは、風が吹いてさえいれば目的地に船を進められる。
逆風に向かってでも進めるのだ。
考えてみると不思議である。
その原理を調べるために、まず帆が風から受ける力を見てみよう。
帆が風から受ける力を簡単に理解するには、風が空気の分子の集まりと考え、その分子をテニスボールに見立てるといい。
どのように風が帆にぶつかっても、帆が風から受ける力は帆の面に垂直になることが見て取れる。
このことを念頭に置けば、風に対してどのような角度に帆を張ればいいか理解できる。
追い風(つまり順風)のときには、舳先(へさき)を目的方向に向け、帆を風向きに直角に張ればよい。
横風のときにも、舳先を目的方向に向けるが、帆は後ろに回して風向きの斜め45度の角度にする。
こうすれば、舳先の方向の力が得られるからだ。
問題は向かい風(逆風)の場合である。
このときは、舳先を目的方向の斜め前に向け、帆を後ろに回し、舳先の方向の力が得られるようにする。
しかし、そのままでは目的地から斜めに遠ざかってしまうので、例えばタッキングという技法でジグザグ走法し、目的地に向かうようにするのだ。
実際の風は複雑であり、以上のような単純なものではない。
そこがヨットのおもしろいところでもある。
自分の操縦(そうじゅう)するヨットの特性と風の性質を上手に利用することで、ヨットはすばらしい水上の〝芸術品〟になるのだ。
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」 JLogosID : 8567120 |