ボールペン
普段、当たり前のように利用しているボールペンだが、いろいろな種類の製品が出回っている。それらの工夫を見てみよう。
文具店の筆記コーナーに立ち寄ると、色の鮮やかさと形の豊富さから、ついつい買いたくなってしまうのがボールペンである。
その豊富さは外見だけではない。
内部のインクや構造もバラエティーに富んでいて面白い。
まずボールペンの基本構造を押さえておこう。
ボールペンという名称が示すように、先端には金属ボールが埋められている。
それが筆の役割になってインクを紙に運ぶのだ。
安価なボールペンでも、先端にはミクロ単位の加工が施されている。
一見頑丈(がんじょう)そうだがデリケートで、突いたり落としたりすると破損(はそん)するので注意しよう。
最初にも述べたように、ボールペンのインクや構造はバラエティーに富む。
技術的には飽和(ほうわ)しているように見えるボールペンの世界だが、さまざまな工夫が新たに加えられている。
一例として加圧ボールペンを見てみよう。
普通のボールペンは、芯を上に向けて書くとインクが出なくなってしまう。
上に向けると自らの重みでインクが下がろうとし、筆記中に空気を巻き込んでしまうからだ。
インクとボールとの間に空間ができると、字が書けなくなる。
そこで、インクの芯の空気圧を高め、常にインクがボールに向かうようにしたのが加圧ボールペンである。
これならば、上向き筆記をしても大丈夫である。
もう一つの例として消せるボールペンを見てみよう。
その名の通り、消しゴムでこすると書いた文字が消せる不思議なペンである。
その秘密は、消しゴムでこするときに発生する摩擦(まさつ)熱にある。
インクとしてロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤を一つのマイクロカプセルに入れた顔料を用いている。
摩擦で温度が上がると、この調整剤が働いて色を消すのだ。
本来は無色のロイコ染料が、顕色剤と結合することで発色する性質を応用している。
リライトカード(78ページ)との違いは、ロイコ染料と顕色剤の間に調整剤を添加(てんか)したことである。
これによって、低温でも字を消せるのだ。
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」 JLogosID : 8567023 |