明神下 神田川本店
【みょうじんした かんだがわほんてん】
古格を誇る老舗中の老舗
徳川幕府賄い方を務めていた初代が文化2年(1805)、万世橋近くに蒲焼の屋台を開いたのが始まり。現当主の神田茂さんで11代目を数える、東京きっての老舗だ。現在の建物は昭和27年の再建ながら、旧家の屋敷の古材を用いているため、築年数以上の貫禄を備えている。和室のほか、平成18年に増築した洋室も、中庭を眺めながらくつろげると評判がいい。
「昔のままに仕事をするのが老舗の役割」と語る神田さんは、うなぎを割くのも炭火で焼くのも、また家伝のたれで味つけするのも、すべて昔ながらの手仕事で伝統の味を守っている。
うな重などの値段の差は、うなぎの大きさの違いによる。大小にかかわりなくうなぎはすべてふっくらとやわらかく、香ばしい匂いが鼻孔をくすぐる。人気の肝焼はうなぎ6~7尾で1串分しか取れないため、早いうちになくなることが多い。肝はすべて肝焼に使うから、当店の献立に肝吸いはない。街の喧噪を忘れさせてくれる重厚な店内で、老舗の味を堪能したい。
| 東京書籍 (著:見田盛夫/選) 「東京五つ星の鰻と天麩羅」 JLogosID : 14070700 |