▼初ガツオたった2尾で大工の手間賃1カ月分!
カツオという名前の由来は平安時代までさかのぼる。その頃の人々はカツオを干して食べていた。今のかつお節ではなく、今日でも伊豆半島の賀茂村の浜で作られている塩ガツオに似たものと私は推測している。それが硬いから「かたうお」(堅魚)と呼ばれ、いつのまにかカツオに転じた。魚偏に堅と書くのはそのためであろう。平安時代の堅魚は庶民の食卓にもよく見られたようだが、江戸時代になると生食が普及し、それと同時にやけに高価になった。それでも江戸っ子は大のカツオ好きだった。ことに初ガツオへのこだわりは尋常でなく、それがまた多くの傑作川柳を生み出すことになった。次のはその一つ。〔まな板に小判一枚初がつを‐其角〕
文化9年(1812)の記録によると、江戸日本橋の魚河岸に初ガツオが入荷され、そのうちの6尾は将軍家へおさめられ、2尾が料亭の八百善に2両1分で買われたとある。当時の2両は大工の1カ月分の手間賃に当たるというから、今ならウン十万円。よほど見栄っ張りの胃袋におさまったにちがいない。
| 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070014 |