屁の三徳
【へのさんとく】
「屁」は古来より魅力的であった
つまらないもののたとえとされる「屁」だが、古来、生活訓やたとえ、読み物の題材となっている。生活訓としては「我慢をすると体に悪い」「すっきりする」「腹が減る」が代表で、これは「屁の三徳」といわれている。たとえでは、「へっぴり腰」「屁とも思わない」「屁理屈」「屁の河童」など枚挙にいとまがない。読み物も古くからあり、平賀源内の『放屁論』もその一つだ。日本武尊は、「へびす」のなまった夷が草に火をつけて大勢で放屁をしたので火が尊のほうになびき、尊は剣を投げて夷の屁を切った。八方に夷が逃げたため、逃げることを辟易といいはじめた。辟易とは「屁消益」のことで、屁が消えて尊の得になったことをいう。また、クサいものをまき散らしたのでこの剣を「臭薙の宝剣」と名づけたという説も載っている。民話のなかにはおもしろいものが多く、「ダンダッ(誰だ)」と聞こえる屁をする男が番人となって盗人を捕らえる話や、姑を吹き飛ばすほどの屁を放つ嫁が、果実を落としたり荷駄をもらったりすることで、なんとか離縁をまぬがれ部屋の起源となった「屁をひる室」をあてがわれた話などがある。このように、つまらないもののたとえが多い「屁」だが、古来、多くの人が興味を持って記述してきたのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820796 |