フロイト
【ふろいと】
自分自身が神経症で、タバコを手放さなかった心理学者
オーストリアでユダヤ商人の子として生まれ、後に世界的な精神分析学者となるジークムント・フロイト。彼はブリュッケの生理学研究室で神経細胞の組織学の研究をし、やがて臨床実習に従事した。パリに留学した後、三〇歳で神経病医として開業。ヒステリー患者の根本的治療を模索しているなかで、患者に自由に話をさせ、患者自身も気づかないでいた精神状態を引き出す「自由連想法」と称する精神分析療法を生み出した。フロイトは当時の医学界のなかで最も遅れていた精神医学を研究し、精神分析学を創始した功労者であり、彼の研究により、精神医学は大きく発展した。彼が生み出した精神分析学は、文学や社会学など、ほかの学問分野にも大きな影響を与えた。ところで、精神分析の祖フロイトは、なんと自分自身が神経症を患っていたといわれる。若い頃から情緒が不安定で、この症状があらわれると物を書くことも集中して考えることもできない。また旅行不安の発作にも悩まされた。これを克服した後も、汽車に乗り遅れるのではないかという不安が消えず、汽車に乗るときは一時間も前からプラットホームに立っていたという。一日に二〇本もの葉巻を手放せないというニコチン中毒でもあり、後に不整脈が見られるようになったり、六七歳で口蓋部にがんが発病し何度も手術をくり返したのも、そのせいではないかと考えられている。彼はそれがわかっていても、発病後も葉巻をやめることができなかった。フロイトは一時コカインを研究していたことがある。コカインによって気分が明るくなることを知ったフロイトは、憂鬱を吹き飛ばし、仕事に専念するためにコカインを服用したこともあるという。コカインに中毒性があることの理解が不十分だったためで、婚約者や妹にまで勧めていたという。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820785 |