フィンスタビライザー
【ふぃんすたびらいざー】
日本人が発明した、船の横揺れを防ぐ装置
波の上で最もよく起こる揺れは、左右に傾く「ローリング」、いわゆる横揺れのことだ。船には、安全に航行し、なおかつ船の上でもなるべく快適に過ごせるように様々な工夫がなされているが、横揺れを防ぐ装置としては、「フィンスタビライザー」がある。船の両方の舷(船べり)の船底近くに設置された可動式の小さな翼状のもので、船の揺れに合わせて翼の角度を変えることで、船の揺れを抑える働きをする。客船などに広く使われている。現在、フィンスタビライザーの特許はイギリスの企業が持っているが、発明したのは日本の元良信太郎博士である。発明されたのは戦前のことで、最初に船に装備されたのは、一九二三(大正一二)年、対馬商船の暁丸だった。この年の一一月、暁丸が荒れた壱岐と対馬間を航行したときのことである。暁丸のローリングは、平均でも一二度、最大二〇度にもおよんだ。ところが、フィンスタビライザーを作動させると、ローリングは平均三度、最大一五度にまで軽減したという。非常に有効な装備だったのだが、コンピュータもなかった時代のこと、フィンを上手く制御する技術がともなわず、思ったほどの効果をあげることができなかった。そのため、やがてこの特許はイギリスの企業に売却されてしまったのである。現在、このフィンスタビライザーは、船にはほぼ必須な装備の一つとなっている。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820757 |