ニシキヘビ
【にしきへび】
ニシキヘビは、二本の足でやさしく相手を愛撫する?
ニシキヘビには、退化して久しく使われなくなったかつての足がまだ残っている。ニシキヘビの体は、私たちから見れば全部が尻尾のようにも思えるのだが、その長いひも状の体は、胴体といっていい部分と尻尾の部分に分かれている。体をずっとたどっていって、急に細くなっていくところがその分かれ目だ。その部分の腹側に、肛鱗と呼ばれる大きい鱗がある。この鱗は肛門に蓋をする役割のもので、その左右に、人間の指の爪に似たような爪が一本ずつ尻尾のほうに向かって突き出している。これが、かつての後ろ足が退化したものなのである。退化はしているけれど、なくなっているわけではない。そうすると、いまでも何かの役割を果たしているのではないかと思うのだが、これがちょっとおもしろい。オスはこの爪でメスの背中を引っかくようにして交尾行動に誘うというのだ。この爪の中心には、体内に一本だけしかない骨があり、わずかながら筋肉もあるので、なんとか動かすことはできる。この退化した足を、オスのニシキヘビは交尾をしたいときに一所懸命使って、やさしくメスを愛撫して誘っているというわけだ。インドニシキヘビの場合、この愛撫の音が五〇センチほど離れた場所まで聞こえるという。サイズの大きい南米産のボアコンストリクターという種類のヘビに関しては、一メートル八〇センチほど離れても聞こえるという。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820659 |