千手観音
【せんじゅかんのん】
腕が四二本なのに「千手」という理由
何人たりとも分け隔てなく、慈悲の心でありとあらゆるものを救ってくれるという千せん手じゅ観かん音のん。その手は、本当に千本あるのだろうか。千手観音は、京都三十三間堂の本尊がそうであるように、一般的には「十一面四十二臂」である。「十一面」とは頭頂の一〇の顔と本体の一つの顔のことで、「四十二臂」とは胸の前で合掌する二本の手とそれ以外の四〇本の手のことである。したがって、手は四二本しかないわけだが、それらのうちの胸前の手以外の四〇本の手は、それぞれ天上界から地獄までの二五の世界を救うものだといわれる。四〇×二五=一〇〇〇、したがって千手観音というわけである。奈良興福寺の千手観音像に関していえば、四〇本の手のなかに、それぞれ二五ずつの眼があると考えられているため、千眼観音とも呼ばれている。同じく奈良県の唐招提寺にある有名な国宝の千手観音像は、なんと、もともと手は千本すべてあったといわれている。しかし、残念ながら四七本は欠けて、最近までは九五三本だった。二〇〇七年現在、修復中である。ちなみに、本物かどうかは定かではないが、巷では古美術品として「唐招提寺の千手観音の手」なるものが出回っているという。もちろん全部が全部本物のわけがないが、実際欠けていたわけだから、本物もあるかもしれない。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820490 |