世界遺産
【せかいいさん】
世界遺産の歴史は、エジプトのアブ・シンベル神殿水没危機から
世界遺産は、一九七二年にユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の総会で、人類共通の財産として守り続けていくべき文化遺産と自然遺産を認定し保護する目的で、「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」が採択されたことによって誕生した。二〇〇六年一月現在で世界一八二カ国が条約を締結している。日本は一九九二年に同条約を締結した。この条約に至るきっかけは、エジプトのアブ・シンベル神殿が水没の危機にさらされたことにある。一九五九年、ナイル川の上流でアスワン・ハイ・ダムの建設がはじまったが、貯水能力約一六〇〇億立方メートルという世界最大級のダムは、アブ・シンベル神殿を含むナイル川沿岸にある遺跡の大半を飲み込む形で設計されていたのである。これに対し、ユネスコは警鐘を鳴らした。事前調査をおこない、翌年には神殿救済を全世界に対して呼びかけたのだ。その結果、神殿は一万六〇〇〇個のブロックに解体され、当初の場所から六四メートル高い丘に移築されたのである。移築工事完成から四年、ユネスコの総会で前述の世界遺産条約が採択された。条約は一九七五年に発効となり、このときに世界初の世界遺産に登録されたものは、ドイツのアーヘン大聖堂やアメリカのイエローストーン、ガラパゴス諸島などを含む一二件(自然遺産四、文化遺産八)だった。なぜか世界遺産のきっかけとなったアブ・シンベル宮殿は、このなかに含まれておらず、同宮殿が世界遺産に登録されたのは翌年のことである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820481 |