オシドリ夫婦
【おしどりふうふ】
実際のオシドリの夫婦は、仲がよくない
いつまでも仲睦まじい夫婦によく使われる「オシドリ夫婦」という言葉。語源はまさしく鳥のオシドリなのだが、実際にその生態が明らかになるにつれ、そのたとえには疑問符をつけざるを得ないようだ。確かにオシドリは、子どもが生まれるとオスとメスが一緒に仲睦まじく子育てをする姿が印象的だが、どうやらこの夫婦は長続きはしないようなのだ。昔は、そもそもオスとメスがつがいになっている鳥の様子を見ても、それが本当に同じ個体同士なのかどうかははっきりとわかっていなかった。ところが、マーキングなどをして個体としてのオシドリの研究が進んだ最近では、毎年毎年その交尾相手が代わっていることがわかった。一夫多妻ではなく一夫一妻制ではあるのだが、そのスパンは短く、冬になると群れで越冬するため、その時期にはつがいはすっかり解消されてしまう。しかも、オスは交尾をしてメスが卵を温めはじめると、どこかに遊びに行ってしまうという。では、なぜ昔の人がオシドリのつがいに仲がよいイメージを持ったのか。オシドリはもともとオスもメスも茶色で目立たない色をしているが、オスは繁殖期だけ美しい羽の色になる。毎年、繁殖期にはメスを引きつけるため、美しく変身するのだ。そして繁殖の目的を果たすとまた、もとの茶色に戻ってしまうのだが、繁殖期に目立つ色になったオスのオシドリがメスとつがいで行動しているのを見て、実際はその時期だけなのだが、「オシドリの夫婦が仲よくしている」と人の印象に残った、ということらしい。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820121 |