エルニーニョ
【えるにーにょ】
異常気象の元凶とされるが、ペルーでは神に感謝すべき現象
エルニーニョとは毎年一二月頃に南米ペルー沖の海面水温が上昇すること。数年に一度、その現象が一万キロも離れた日付変更線付近の太平洋にまでもおよび、大被害をもたらすことがある。これをエルニーニョ現象と呼ぶが、海面水温は平年に比べて一?二度、ときには四?五度も上がり、その状態が一年?一年半も続く。海洋の大規模な変化は大気の循環にも影響をおよぼし、世界各国に異常気象をもたらすのだ。エルニーニョ現象が起きると、日本では暖冬、長雨、冷夏が発生しやすく、東南アジアやオーストラリア、インド、アフリカなどでは干ばつが、南米大陸の西岸では大雨が起こりやすくなる。最近では二〇〇二?〇三年、二〇〇六?〇七年に大規模なエルニーニョ現象が観測されている。ではエルニーニョ現象はなぜ起きるのだろうか?ペルー沖は南極方面から寒流のフンボルト海流に沿って栄養塩に富む下層水がわきあがるところであり、その海水温は約二二度。ペルー沖の海水は赤道付近を吹いている東風の貿易風によって西へ運ばれ、太陽で暖められながらフィリピン方面へと向かう。この貿易風が何らかの原因で弱まることで、ペルー沖で冷水がわき上がる現象が抑えられ、海水温が高くなる。それによってさらに貿易風が弱められ、長期にエルニーニョ現象が続くというわけだ。なぜ貿易風が弱まるのかについてはいろいろな説があり、まだ原因は解明されていない。世界規模で大被害をもたらすこのエルニーニョ現象は、意外にも地元ペルーでは「神様のくれた休日」と好意的に受け止められている。もともとエルニーニョ(El Nino)とはスペイン語で「神の子キリスト」を意味する言葉だ。毎年一二月頃に海水温が上昇することでアンチョビ漁が休漁になり、乾燥した大地に雨が降る。これは沿岸の漁師には休日を、内陸の農民には恵みの農作物をもたらすというわけだ。そこでカトリック信徒であるペルーの人々が神への感謝をこめてエルニーニョと呼ぶようになった。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820110 |