ウイスキー
【ういすきー】
普及したのは、ブドウの木につく害虫のおかげ!?
日本では昨今の地酒ブームで日本酒や焼酎、ビールなど「おらが町」の酒がどんどん全国区へ進出を果たしている。いまでは世界的に有名なスコッチウイスキーも、実はそんな経緯をたどった酒の一つだった。スコッチウイスキーは、一〇〇年ほど前まではスコットランドだけで飲まれていた地酒にすぎなかった。当時、ヨーロッパの上流社会で愛飲されていたのはブランデー。酒といえばすなわちブランデーをさすほどポピュラーなものだったようだ。ブランデーは八世紀頃、錬金術師がワインを蒸留したのがはじまりとされ、一二?一四世紀頃にはイタリアやスペイン、南フランスなどヨーロッパ各地で錬金術師や医者がワインを蒸留し、飲み物としてだけではなく消毒薬などの医療用としても用いられたという記録も残っている。一九世紀中頃、フランスは長年悩みの種だったブドウのうどんこ病対策としてアメリカから抵抗性苗木を輸入した。その結果、その苗木についていたフィロキセラ(ブドウネアブラムシ)がヨーロッパ中に蔓延してしまった。ブランデーの生産量は激減し、その代替品としてそれまであまり飲まれていなかったスコッチウイスキーが、にわかに注目されることになった。ちなみに、ウイスキーの起源は紀元前にまでさかのぼることができる。その頃、アイルランドのケルト人が穀類の酒を蒸留していたことが伝えられているのだ。現在のウイスキーの原型ともいうべきものができたのは、一二世紀頃といわれており、名前の由来は「生命の水」を意味するゲール語の「ウシュクベーハー」から転じたのだという。一一七一年、イングランドはプランタジネット朝初代の王、ヘンリー二世がアイルランドを征服したときに、ウイスキーはその製造法とともにスコットランドに伝えられた。それから約一〇〇〇年後、スコッチウイスキーはブドウの木につく害虫のおかげで、ようやく「メジャーデビュー」を果たしたのだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820070 |