アメダス
【あめだす】
「アメダス」の「アメ」は、「雨」が由来ではない
天気予報といえば、雨が降るかどうかがいちばん気になるところ。そのため、気象庁の「アメダス」のことを「雨ダス」という意味から付けられていると勘違いしている人が少なくない。実はアメダスの名前に「雨」はまったく関係ない。アメダスは「地域気象観測網」の略称で、英名の「Automated Meteorological Data Acquisition System」を構成する各単語の頭文字からとったもの。略してAMeDASになったわけである。そもそもアメダスの開発がはじまった頃、気象庁には測候課と測器課という二つの部署があり、測器課がつくる観測の道具を使って、観測をするのが測候課であった。その測候課の木村耕三氏がこのアメダスの名づけ親である。木村氏には戦争経験があり、満州で軍務についていたとき、各地に展開している通信部隊から寄せられる天気の報告が、大いに役立ったのを知っていた。それを元に、測器課に、その観測網をつくることを提案していた。当時、そのシステムを全国に張りめぐらせるというのは、夢物語のようにも思えたが、測候課長の藤原寛人氏も話のわかる人物で、従来の枠組みにとらわれず、そのアイデアを完成させることができた。ちなみに、その藤原課長は、山岳小説でおなじみの新田次郎でもある。一九七四(昭和四九)年一一月一日、アメダスの正式運用ははじまり、降水量、風向き、風速、気温、日照の細かな分布データが、一時間ごとに予報官の手元に届くようになった。これが天気予報の質を格段に向上させていくきっかけとなったのはいうまでもないだろう。一九八三(昭和五八)年四月四日には、NHK全国放送で降水量データの放送が開始された。その際に女子アナウンサーが「アメダスによると……」と放送内でいったことに対して、『「雨だす」とは何ごとか。「雨です」ときちっといいなさい』という苦情がよせられたという話もある。いまではすっかり「アメダスの情報では……」という天気予報のフレーズも聞き慣れてしまっているが、そんな歴史があったのである。現在、降水量の観測所は全国に約一三〇〇カ所もあり、このうち約八五〇カ所では、降水量に加えて、風向、風速、気温、日照時間を観測し、雪の多い約二八〇カ所では、積雪の深さも観測している。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820019 |