幽霊
【東京雑学研究会編】
§どうして日本の幽霊には足がないのか?
幽霊といえば、日本では夏の夜にはおなじみで、人々をゾォーッとさせては、ひととき蒸し暑さを忘れさせてくれる。よく知られているのが『四谷怪談』である。日本ばかりではない。西洋の幽霊として有名なのは、シェイクスピアの『ハムレット』に登場する幽霊ではないだろうか。
いつの世でも、すべての人間が幸せに人生を閉じるとは限らない。洋の東西を問わず、この世に思いを残したまま死んだ人の霊魂が、時々この世にさまよい出てくるのが、幽霊なのである。その姿は、小説、映画、演劇、絵画などに、さまざまな形で描かれてきた。
今日定番になっている幽霊の姿を見てみると、西洋と日本では大きな違いがある。西洋の幽霊には足があるのに、日本の幽霊には足がないのである。
実は、元禄年間(一六八八~一七〇四)まで描かれてきた日本の幽霊には足があったのだが、江戸時代中期以降、足を描かなくなったようだ。それは、江戸中期の画家、円山応挙の描いた足のない幽霊の絵が、あまりにも薄気味悪く、迫力に満ちていたため、幽霊といえば応挙のそれと、イメージが定着してしまったのである。
ちなみに白い着物と額の三角の布も、この時代に幽霊の衣装として定まったようだ。芝居においてもこの姿で幽霊を演じたため、どんどん広まってしまったのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670942 |