ベレー帽
【東京雑学研究会編】
§ベレー帽が画家のシンボルになったのはなぜ?
画家や漫画家のトレードマークになっているのが、ベレー帽。
女性や子どももかぶるし、これを制帽にしている軍隊もあるが、やはり芸術家のものというイメージが強い。
ベレー帽を画家がかぶるようになったのは、ルネサンス時代からのことである。当時の人気画家ラファエロも、この帽子をかぶっていたし、ルネサンス以降の時代の画家は、ベレー帽をかぶった自画像を、よく描いている。
画家がベレー帽を好むようになったのは、まず仕事の性質による理由が考えられる。
作品に取り組んでいる最中、髪が顔にかかると、邪魔である。興が乗っているときは、一瞬たりとも絵筆を止めたくない。そこで、髪を押さえることのできるベレー帽をかぶったのだろう。
「だったら、髪を切ってしまえばいいじゃないか」と思うところだが、男性が髪を短くするようになったのは、近代になってからの習慣なのである。
現代の画家も、あえて長髪にしている人が多く、邪魔なときは髪を束ねたり、バンダナでまとめたりしているが、ベレー帽をかぶるのも、それと同じなのである。
ベレー帽は、柔らかいフェルトでできていることが多く、頭を包むシンプルな構造なので、ヘアバンド代わりになったのである。
次に考えられるのは、ファッション性である。
シルクハットのような帽子は、決まりきったかぶり方しかできないし、洋服もそれに合ったものでなくてはならない。しかし、ベレー帽なら、斜めにかぶったり、あみだにかぶったり、羽根飾りやブローチをつけたりと、自分の好みに合わせてアレンジできるし、何を着るかも、そのときしだいで自由自在である。
つまり、ベレー帽は実用的で、かつ画家のお洒落心をくすぐる存在だったのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670863 |