ヘルベチア
【東京雑学研究会編】
§「ヘルベチア」とはどこの国か?
「ヘルベチア(Helvetia)」はスイス連邦のことである。
スイスは英語では「Switzerland」と表記され、オリンピックなどではこの名称に従っているが、実際には自国のことを「ヘルベチア」と呼び、切手にも通貨にもこの名前が刻まれている。
スイスの正式名称は「Confederatio Helvetica(ヘルベチア連邦)」。もちろん、公用語は英語ではない。
スイスの面積は九州ほどで、人口は約六〇〇万人。
しかし北部と中部に住む約六五%の住民がドイツ語を話し、西部ではフランス語、南部ではイタリア語が使われている。さらにロマンシュ語を話す一%ほどの人々がおり、スイスではこの四つの言語が公用語とされている。
四つの公用語、と聞くと、スイス人すべてが四か国語を使えるような誤解を招くが、実はそうではない。
フランス語を使う人々はドイツ語を「風邪をひいた馬の言葉」といって、ビジネスなどで必要性が生じない限り覚えようとしないし、ドイツ語を話す人々はイタリア語を「カラスの鳴き声」とばかにして覚えたがらない。
スイスは隣り合う国の言葉を使う民族が集まって構成された国家なので、スイス政府では四つもの言語を公用語とせざるを得なかった。どれか一つの言語を公用語としてしまうと、それを使わない人々から猛反対を受けて、国の統一が取れなくなるからだ。
国名に関しても、拮抗する四つの勢力のいずれにも反感を持たれない名前をつけなくてはならなかった。
そこで選ばれたのが「ヘルベチア」。この名前の由来は、前五世紀にさかのぼる。当時、スイス近辺にはケルト系のヘルベチア人が住んでおり、ライン川北方のゲルマン人としのぎを削っていた。
この古い強大な民族の名前が連邦国家統合の象徴として選ばれたのだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670862 |