フェロモン
【東京雑学研究会編】
§人間はフェロモンで恋に落ちるのか?
「フェロモン」という言葉をよく耳にするようになった。しかし、この言葉は、ファーブルが『昆虫記』で、メスの蛾がオスを性行動に誘うときに出す物質「性フェロモン」として紹介してから有名になったそうだから、かなり昔から知られているのだ。
ほかには、ゴキブリが仲間を集める「集合フェロモン」、アリが道を教える「道しるべフェロモン」がある。最近、これらのことから、人間にも生殖活動や異性にだけ働きかける物質があるのではないかと、研究が始まった。しかし、今のところ、異性を強烈にひきつけ恋を成就させる物質は見つかっていない。
フェロモンは、「匂い」と混同されることが多いが、化学物質とはいうものの、「匂い」のように嗅覚器官でとらえられるのではなく、鼻の鋤鼻器官(ヤコブソン器官)というところで、キャッチされている。
人間の場合、成人になると鋤鼻器官は退化すると考えられていたので、フェロモンの存在を疑問視していたのだが、最近、人間の成人にも、鼻の隔膜の基部辺りに鋤鼻器官が存在することが認められ、その上皮には感覚細胞が機能していることがわかった。
ユタ大学の研究では、フェロモンらしい物質に、男性が反応するものと、女性が反応するものがあることがわかったらしい。被験者たちは、この物質を嗅いだとたんにいい気持ちになり、リラックスしたと語ったそうだ。
シカゴ大学では、女性の腋の下から出る物質を、別の女性に毎日嗅がせたところ、二人の月経周期が重なることがわかった。前から女性に知られていた「月経がうつる」現象が、明らかになった。
スウェーデンのカロリンスカ研究所では、男性ホルモンからできる物質と女性ホルモンに似た物質を、男女の被験者に嗅がせた。すると、脳の本能に関わる部分である視床下部が反応したという。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670813 |