引出物
【東京雑学研究会編】
§日本最初の引出物は、馬だった
披露宴に招いたお客様への手土産が「引出物」。
引出物には実用的な物や、さりげなく記念になるような物が喜ばれるが、出席する人の年齢層や趣味は多種多様で、新郎新婦は引出物選びに頭を悩ます。最近では、かさばらない「引出物カタログ」を渡して、後で好みの品を注文してもらう方法が人気を集めている。
引出物のタブーは鋏や包丁など「切れる→縁が切れる」に繋がる刃物、腐りやすい生物や重くてかさばる物など。
ところが日本でもともと引出物として贈られていたのは、これ以上ないほど重くてかさばる物だった。
平安時代中期以降の貴族たちは饗宴の後の手土産に、なんと馬を贈っていたのだ。ほかにも鷹や犬、衣類なども贈られていたのだが、馬が最も一般的だった。
こういった事情から、「引出物」の語源は「馬を引き出す」とされている。当時の上流社会でも馬は貴重品。それを贈ることが最高のもてなしだったというわけだ。
武家社会でも馬を送ることが多く、ほかにも刀剣、砂金、武具などを贈っていた。
戦国時代になっても、贈答品の定番は鎌倉時代と大きく変わらず、馬や鷹、武具一式などが贈られていた。さらに金銭や扇、鶴、白鳥、雁、鮭、鱈などの鳥や魚、野菜や昆布などの物産が加えられていった。
こういった自分の分身ともいえる貴重品を贈ることで、宴への出席者との絆を深め、人と人との関係を長く保とうとしたものと考えられているのだが、いずれにしても、昔の引出物はやたらと重い物やかさばる物が多い。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670785 |