花火
【東京雑学研究会編】
§さまざまな色や形の花火はどんなしくみになっているのか?
夏の夜空を彩る花火は、菊や牡丹の花など昔ながらの定番に加え、魚やハートなど変わった形も増えている。色も、赤から黄色、黄色から緑というように途中から変わるものもあってバラエティ豊かだ。花火は火薬で作るが、これら複雑な花火はどんなしくみになっているのか。
まずは形のしくみから。業界では、主流の花の形など丸く広がるものを「割りもの」、魚など特殊な形を「型もの」というが、基本的なしくみは同じだ。
打ち上げ花火の球形の殻の中には、火薬を丸めて和紙で包んだ「星」という小さな火薬玉が並んでいる。星の真ん中には「割り薬」という火薬が入っていて、割り薬の爆発によって星が四方八方に広がりさまざまな形を描く。
丸い割りものの場合、星はお椀状の紙の面に沿って並び、型ものの場合は魚やハートの形に並んでいる。どちらも割り薬の爆発で、放射状に飛んでいくからそれぞれの形になるのだ。
ただし、花火は回転しながら上がっていく。そのため、どの位置で広がるか、上下逆にならないかなど、タイミングを合わせるのは難しく、複雑な型ものは高い技術を必要とする。
型ものの歴史はけっこう古く、単純なものなら明治から大正時代にあったという。まだ星の色が一色だった当時、変化をつけるためにはじまったらしい。
次に色の変化はいわゆる炎色反応を利用したものだ。
炎色反応は、アルカリ金属などの塩類を炎の中に入れるとその元素特有の色を現す反応だ。例えば、ナトリウムは黄色、カルシウムは橙色である。
星の中につめる火薬にこれらの塩類を入れておけば、爆発で高温になってそれぞれの色を出す。途中で色を変えるには、星の一つ一つに別な色の炎を出す火薬を重ねて詰めればいい。
色の変化の歴史も古い。もともと花火は、遠隔地に軍事情報を伝えるものである。色の変化は情報を表すのに使った。
江戸時代には各藩で花火や狼煙の開発を進めていたが、中でも最も熱心だったのは仙台の伊達家だ。築地にあった伊達家の屋敷で行われる実演を見るために隅田川に遊覧船が出たのが、両国の川開き、隅田川花火大会のはじまりといわれている。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670770 |