ネコ①
【東京雑学研究会編】
§ネコが死ぬとき、どこかへ行ってしまうのはなぜか?
家族みんなで可愛がっていたネコが、不意に姿を消してしまった。心配して辺りを探し回っても、行方はわからないまま。おばあちゃんは、「もう、探すのはやめなさい。ネコ岳にお参りに行ったんだよ」と言っているが、一体、どういうことだろう?
体が弱り、自分の死期を悟ったネコは、飼い主の前から姿を消す習性がある。
野生動物は、弱ると天敵に襲われたり、仲間に無視されたりする。だから、ギリギリまで元気に振る舞って過ごすのだが、いよいよ具合が悪くなると、ほかの動物の目の届かないところに隠れ、ひっそりと身を横たえる。そして、ほとんどの場合、そこで死んでしまうのである。
長く人間の家で飼われているネコで、狩猟行動や攻撃性を失っていたとしても、死の間際には、野生の本能がよみがえるわけである。ネコが選ぶ死に場所は、それまで自分の行動範囲だった家の下や茂みの中など、安全で人目につかないところである。その場所に向かうときでさえ、弱った様子は見せず、いつもどおりの様子だという。この習性は、野良ネコでも同じで、何食わぬ顔で仲間の前から姿を消してから、死んでいく。
飼い主にしてみれば、「水くさいなあ、最期まで看取ってやりたいのに」と思うところだが、これは動物としての本能なのだから、やむを得ないことである。ネコのほうでも、弱ったそぶりも見せずに頑張って出ていくのであるから、その心情は尊重していなければならない。
「年老いたネコは、ネコ岳にお参りに行く」などの民間伝承が、各地に伝えられているが、これは、可愛がっていたネコが、どこかで元気でいてくれればという願望から出たものであろう。
もっとも、最近の都市部では、「ご近所に迷惑をかけては」と外出禁止のネコがいる。こういったネコは、飼い主の前で息を引き取ることになる。
また、死に場所を選ぶどころか、交通事故で命を落とすネコも多い。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670745 |