闘牛士
【東京雑学研究会編】
§闘牛士の赤い布に興奮しているのは牛じゃない!
牛の目は、色を識別できない。牛は世の中すべてモノクロ映画のようにしか見えず、これは犬だって同じこと。人間のように総天然色のカラフル映像を堪能することは、動物ではできないのだ。
その事実を知ると、ちょっとした疑問が沸き起こる。闘牛のとき、牛は闘牛士がひるがえす「ムレタ」と呼ばれる赤い布に興奮し、闘牛士へと突進を繰り返すではないか。色が識別できない牛が、なぜ赤い布で興奮するのだろう。
実は、これには根本的な勘違いが存在しているのだ。多くの人が、牛が赤という色に反応していると思い込んでいるが、牛が興奮しているのはムレタの動きである。闘牛士が扱うムレタの怪しげな動きを見て牛は身の危険を感じ、暴れまわっているというわけなのだ。
でも、ムレタの赤は、ちゃんと別のものを興奮させている。闘牛場に集まっている男たちである。
男は赤に興奮する。赤を見ると血圧が上がり、脈拍も速くなって、はっきりとした興奮状態を示すのだ。バーや飲み屋の灯りにやたらと赤が多いのはそのためで、店内の照明も赤いものが多い。男は赤い照明に引きつけられるように店へと向かうのである。
昔は兵隊服にも赤が使われていた。これは赤い色に慣れさせてケガをしても驚かないようにする効果と、赤に興奮して戦闘意欲が高まるという二つの効果を狙ったものだったようだ。
ちなみに、女性は赤では興奮しない。毎月のように赤い血を見ているので、なんとも思わないのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670661 |