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雑学大全ヒトの不思議 > 人物

タレス
【東京雑学研究会編】

§賢い人は結婚しない?

日本人の結婚年齢は年々あがり続けて、独身人口は増加し、それにつれて出生率は減少し続けている。こんな日本の現状を嘆く向きもあるようだが、古代ギリシアの七賢人の一人、タレスにいわせれば、結婚せず子どもも作らないのは非常に賢い選択ということになるらしい
タレス(Thales)は前五八〇年頃に活躍した、ミレトスに住んでいた哲学者である
イオニア(ミレトス)学派の創設者で、哲学だけではなく、幾何学、天文学、地誌、土木技術のほか、政治的実践など多岐にわたり活動を行っていた。
ある日、タレスのところに、これも七賢人の一人、アテネのソロンが旅の途中にたずねていった。
ソロンが
どうして君は結婚して妻子を持とうとしないのですか?」
とたずねたが、タレスは答えようとしなかった。
数日後、ソロンが再びタレスのところをたずねて行くと、そこにアテネからの客人がいた。同郷のソロンは
「アテネに何か変わったことはありませんでしたか?」
と聞いたところ、
「ある偉い人の息子が死んで盛大な葬式がありましたが、父親は旅行中で葬式にはいませんでした」
との答え。
「その父親はソロンという名前では……?」
「ああ、そうだ、たしかそんな名前だった」
このため、ソロンは自分の息子が死んだと思い込み、目もあてられないほどに嘆き悲しんだ。
するとタレス
「今のは冗談ですよ。これで私が結婚して妻子を持たない理由がわかったでしょう? 肉親の愛情が何よりも自分を弱くするものだからなんです」
と笑いながら言ったという。
タレス超自然的な神々の名を持ち出すことなく、万物の生成と変化はわれわれの身近にある水によって成立する、水が万物の構成元素である、と考えた。
超自然的なものに頼らない合理的思考は近代的思考に通じるが、必ずしも結婚する必要はない、という人生観にもタレスの近代性は認められる、といえないこともない。




東京書籍 (著:東京雑学研究会)
「雑学大全」
JLogosID : 12670589

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