ダビデ像
【東京雑学研究会編】
§ダビデ像が肩からかけているのは何?
イタリアの彫刻家で、画家、建築家、詩人としても名高いミケランジェロ。彼はレオナルド・ダ・ヴィンチと並び、盛期ルネサンス様式の完成者として知られる才人だ。
そのミケランジェロの彫刻で有名な「ダビデ」は、旧約聖書の中でも重要な登場人物である。牛飼のダビデはサウル王に仕えるものの、やがてサウルに命を狙われるようになり、逃亡。ゲリラ戦や亡命などを経て、国王にまでのぼりつめるという、数奇な人生を送った英雄である。ところで、そのダビデ像が肩からかけているのは何だろう。
旧約聖書の「士師記」と「列王記」の間にある上・下二巻の歴史書「サムエル記」のうち上巻の一七章(ダビデ台頭史)に、イスラエル初代の王サウルの宮廷に仕えた牧童ダビデが、多くの苦難を乗り越えて、ついにイスラエルとユダの複合王国の王となり、大帝国を建設したことが語られている。
それによれば、ダビデは敵対していたペリシテ人の勇士ゴリアテと一騎打ちを試み、彼を倒して認められ、サウル王に仕えるようになったという。牛飼の少年だったダビデは、石を投げるのが得意だった。この技で、ゴリアテの眉間を割り、勝者となるのである。
このとき、戦いに挑むダビデに、サウル王は自分の甲冑を与え、着せてやる。しかし、ダビデは「慣れていないので、甲冑は不要だ」と断り、それを脱いだとされている。
実はミケランジェロの彫刻で、ダビデが肩にかけているのは、遠心力を使って飛ばす石投げ用具のヒモなのだ。
ところで、少年ダビデを描いたミケランジェロの作品が、青年像になっている理由は、ルネサンス期には若い勇士としてのダビデが好まれたからである。英雄のどの時期を描くのかといった課題も、芸術には大切な要素だったのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670585 |