精子
【東京雑学研究会編】
§人間の精子は生きたまま火葬されてしまう
男性の射精によって一度に排出される精子の数は億の単位だ。その一つ一つが生命体である。いったん女性の体内に排出されると、だいたい人間の体温である三七度の中で毎秒一〇〇μmの運動能力を発揮して子宮を目指す。厳しい生存競争にうちかって運よく卵子と出会えるのは一つの精子だけで、あとはすべて討ち死にである。だから生命力が強く、タフにできている。
それがわかるのが、精子は人間本体の呼吸が止まり心停止が起こっても、まだ体内で生きているという事実だ。
普通、人間が死ぬと、四~五時間で筋肉は電気的刺激にも反応しなくなり、数時間後には胃の消化活動、腸の蠕動運動、血管の収縮などが見られなくなる。そして一〇~三〇時間後にはせん毛細胞が死ぬ。
これで完全に人間という生命体の死になるわけで、この科学的事実に基づき、「埋葬法」では、死後二四時間経たなければ火葬してはいけないことになっている。
ところが、この時点では、男性の遺体における精嚢内の精子たちはまだ生命を保っているのである。彼らが活動を完全に停止するのは、その造物主が活動停止後、およそ八〇時間を経てからなのだ。
人が死ぬと、たいてい通夜、葬儀、告別式といろいろな行事で日にちが経過するが、火葬にされるのは平均二日後。ということは、そのときまだ精子は活動を続けていて、生きながら焼かれていることになる。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670520 |