座布団
【東京雑学研究会編】
§座布団には前と後ろがある?
正方形の座布団に、実は、前と後ろ、表と裏がある。人に「どうぞ……」とすすめるときは、注意しなければならない。
座布団の作り方を知れば、すぐに納得できる。座布団は、長方形の一枚の布を二つに折って、袋状にして縫う。三つの辺に縫い目ができ、一辺だけ縫い目がない。この辺が座布団の前である。だから、来客のために準備しておくときも、目の前の客人に勧めるときも、座布団の前と客人の前、つまり、膝の位置が一致するように置くことである。
最近の座布団の中には、一辺にファスナーがついているものがある。そのときは、ファスナーの辺が後ろになる。
座布団は二辺をミシンで縫い、ほかの一辺は手縫いで仕上げる。手縫いの縫い目に注意すると、片方の布をもう一方の布にかぶせて縫ってあることがわかる。かぶせてある面が、座布団の表となる。
自分が使った座布団を人に勧めるとき、しわやほこりを気にして裏返しにして勧める人がいるが、表裏があるので、わざわざひっくり返す必要はない。手で少し払って、しわを伸ばし、勧めれば十分である。
座布団の起源は、昔僧侶が使っていた円座で、蒲の葉を乾燥させて、渦巻状に編んだものであった。やがて、布の袋に細かく切った蒲の葉を詰めるようになった。
江戸時代になって、蒲の葉の代わりに綿を詰めるようになり、次第に一般庶民にも座布団が普及していったのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670393 |