牛乳
【東京雑学研究会編】
§牛乳を飲むとお腹をこわしやすいのはなぜか?
一般に日本人はカルシウムの摂取量が不足気味だと言われている。一般成人で一日六〇〇ミリグラムのカルシウムを摂るようにと、栄養指導が行き届くようになった。牛乳なら六〇〇ミリリットルで六〇〇ミリグラムのカルシウムが摂れる。骨粗鬆症予防も念頭において、牛乳とはうまく付き合っていきたいものである。
ところが、牛乳は好きなのに、飲むとお腹がゴロゴロ鳴りだして、下痢をしてしまうという人がけっこういる。日本人の場合、五人に一人がこのような人らしく、それも男性に多いという。
この症状は、消化不良の一種で、「乳糖不耐症」という。牛乳の乳糖は小腸の「ラクターゼ」という乳糖分解酵素で、ブドウ糖と果糖に分解されるが、このラクターゼが出にくくなっている人は、小腸で分解されなかった乳糖が大腸に運ばれ、細菌によって分解される。このとき、乳酸や炭酸ガスが発生し、それらが大腸を刺激する。その結果、腹痛や下痢を起こすという。
このラクターゼ、人が生まれたときは、誰の小腸にもあるのだが、その後の乳糖の摂取量の多寡により、大人になると減ってしまう。牛乳や乳製品をあまり摂らない日本人の場合、ラクターゼの働きは欧米人の一〇分の一と言われている。
ちなみに、乳児の場合、乳糖分解酵素は多いが、砂糖の主成分のショ糖を分解する酵素はまだ少ないので、乳児に砂糖を含む菓子や飲み物を与えないよう注意しなければならない。
乳糖不耐症の人は、牛乳を一口ずつ噛むように飲むとよい。お腹がゴロゴロ鳴りにくくなる。
乳製品といっても、チーズやヨーグルトは、乳糖が一部分解されているので大丈夫。また、乳酸菌自体にもラクターゼが含まれている。
乳糖が四分の三くらい分解された「乳糖分解乳」というのもできているので、試してみるとよいだろう。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670249 |