キャビア
【東京雑学研究会編】
§キャビアをまずいといったルイ一五世
世界三大珍味の一つに数えられ、庶民は結婚披露宴のフルコースでオードブルにちょこっとだけ使われているのにお目にかかれれば幸いといったところのキャビアは、イクラや筋子、たらこ、数の子といった、日本人好みの魚卵の一つだ。
キャビアになる卵を産む魚は、チョウザメ。取り出した卵巣を一粒ずつにほぐして塩漬けにしたもので、カスピ海産チョウザメから作ったものが最高級とされている。世界に出回っているほとんどが、ボルガ川河口のアストラハン産で、おかげでロシアは外貨獲得に、このキャビア製造に余念がないのだとか。
キャビアの語源はトルコ語で「歓喜」という意味だが、アレクサンドロス大王がすでにその希少価値を教えられていたというほど、ヨーロッパでは古くから珍重されてきたようだ。
ところが、フランスのルイ一五世は、当時のロシアの皇帝ピョートルから派遣された大使が土産に持参したキャビアを「まずい! 魚のジャムのようだ」といって吐き出してしまったという。彼の少年時代のエピソードだから、あの豊潤な味わいを理解できず、生臭いだけと感じたのかもしれない。
後年になって、画家ピカソがその味のとりことなって、取り寄せたキャビアの代金を送るとき自分のサイン入りスケッチに包んで送ったとか、世界の船舶王といわれたギリシア人オナシス氏が、ジャクリーン夫人のためにキャビア買い付けの専用機を飛ばしたとかというエピソードが語られている。
日本人の中には、お茶漬けにするとうまいという人もおり、同じ塩漬け魚卵なのだから、たらこやイクラより高くつくが、試してみる価値はありそうだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670247 |