海外の宝くじ
【東京雑学研究会編】
§日本にいながら買ってはいけない海外の宝くじ
庶民のささやかな夢、一攫千金をかなえてくれるのは、現在の日本ではジャンボ宝くじくらいしかない。グリーンやサマー、年末など、年に数回しかないチャンスだが、とりあえず前後賞をあわせれば三億円という金額にはなる。
ところが、テレビのニュースなどを見ていると、海外の宝くじで、当たりが出なくて累積された額で何十億という日本円に匹敵するドルを手にしたという、ニコニコ顔のオバサンが映し出されていたりする。そんなくじがあるのなら、自分もぜひ買ってみたい。インターネットの時代だもの、日本にいたって買えなくはないはずだ。
もしそう考えて、実際に海外のくじを購入したら、それは刑法一八七条に違反した罪になる。この条項は「富くじ発売等」の規制をするものだ。
ここでうたわれているのは「富くじを発売した者は、二年以下の懲役又は一五〇万円以下の罰金に処する」というものと、「富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の懲役又は一〇〇万円以下の罰金に処する」、「前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二〇万円以下の罰金又は科料に処する」という三項。
富くじなどという古い表現が使われているが、数字や記号が書かれたくじを売って、抽選などで当選者を決めて賞金を与える仕組みのものは、すべて富くじ。日本で地方自治体などが発行するものも富くじになるわけだが、あれは「当せん金附証票法」によって合法だと認められているから発行できる、まさに当せん金附証票なのだ。
海外のくじはこの証票法の対象外のものなので、海外旅行の折に現地で購入すれば罪にはならないが、日本にいるまま買うと、刑法一八七条の三項違反ということになってしまうのだ。
また、宝くじ購入には年齢制限はなく、子どもがお年玉で買うというようなケースは許されるが、似たような一攫千金の可能性を持つ馬券などのギャンブル投票券は、たとえ成人していても学生は購入禁止だ。射幸心をあおる、つまり濡れ手でアワの夢を見させるからというのが理由だが、あたって手にする額は、宝くじのほうが大きい場合がある。法律というのは、どこか矛盾を含むものらしい。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670174 |