ハイ・ティー
【東京雑学研究会編】
§ハイ・ティーはお茶なのか? それとも食事?
香港のペニンシュラホテルで優雅にハイ・ティーをいただくというのが、香港旅行で忘れてはいけない観光行事の一つだったことがある。
ホテルのハイ・ティーには、紅茶と一緒にケーキやサンドウィッチが供されていた。さて、これはお茶なの? それとも食事なの?
お茶といえば、イギリス。世界の三分の一の量を消費していたこともある、お茶好きなこの国民が生み出した習慣なのである。
現在のハイ・ティーは、休日の午後に客を招いて、ティーをふるまうときに、ケーキやサンドウィッチをつけてもてなすことをいう。
アフタヌーン・ティーは、一九世紀の半ば、貴族によって始められた習慣である。当時の貴族階級の夕食時間は、夜の八時を過ぎていた。そのため、ランチの後、小腹が空いていたのだろう。始めたのはベドフォード公爵夫人で、お茶とともにお菓子やサンドウィッチを軽く食べたのだという。それが始まりとなった。
日本でいうなら、おやつの時間のようなティー・タイムであるが、それが一般に広まったのは、一八世紀半ば頃からの産業革命時代である。優雅なイメージのお茶の時間は、実は、産業革命の頃、遠方への通勤で夕食が遅くなったために、空腹を一時しのぎするために伝わっていったのである。
スコットランドのハイ・ティーは、それより時間が遅く、ティーというよりは食事のようなものであった。スコットランドでは、遅い時間に外でとる食事付きの喫茶のことをハイ・ティーと呼んだのだ。スコーンやサンドウィッチ、ケーキのほかに、肉料理や卵料理、スープまで出される、れっきとした夕食なのだ。
ハイ・ティーは「ミート・ティー」と呼ばれるくらいで、気取った服装で楽しむ、よそいきのティー・ディナーなのである。ホテルなどでも、夕食のことがわざわざハイ・ティーと書かれていることもあるというから、現地では、立派な夕食なのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670159 |