ぶどう以外のおもな果実蒸溜酒
フルーツ・ブランデーの王様カルヴァドス
ぶどう以外を原料とするブランデーとしては、りんごが原料のカルヴァドス、さくらんぼが原料のキルシュワァッサー、プラムが原料のスリボビッツなどがあり、木いちごのフランボワーズや、洋梨のポワール・ウィリアムスを原料にしたものも多い。
なかでも有名なのが、フランスのノルマンディー地方で造られるカルヴァドス。この地域以外で造られるりんごのブランデーはアップル・ブランデーと呼ばれ、カルヴァドスとは区別されている。フランス国内には約100カ所のカルヴァドス蒸溜所があり、約400の銘柄がある。味はまろやかで香りが豊か。食後酒として飲むケースが多い。
最高級品はペイ・ドージュ地区産
カルヴァドスは原産地呼称統制(AOC)により、3つの名称に分かれている。カルヴァドス・ペイ・ドージュにはカルヴァドス県のほかオルヌ県とユール県の一部が含まれ、りんごの醸造酒を単式蒸溜器で蒸溜する。カルヴァドス・ドンフロンテはペイ・ドージュの南西部に当たり、単式蒸溜器または半連続式蒸溜器を使用。材料にはりんごの醸造酒のほか、洋梨の醸造酒も30%ブレンドされる。単にカルヴァドスと呼ばれる生産地区は9カ所あり、ドンフロンテに準じた製造方法。このうちペイ・ドージュ地区産が最高級品として評価されている。
黒い森で造られるチェリー・ブランデー
キルシュワァッサーは、ドイツのシュヴァルツヴァルト地方の特産品。さくらんぼを種子ごと潰して発酵させ、6週間ほど寝かせた後に蒸溜して2~4年熟成。アルコール度数は40~45度と強い。さくらんぼ香があり、通常は無色透明で甘みはないが、一部にほんのりと赤く甘いものもある。凍るほど冷やして飲んだり、菓子作りにも使われる。ただし、甘いさくらんぼのリキュールとは別物だ。混同しやすいので要注意。
| 東京書籍 (著:上田 和男) 「洋酒手帳」 JLogosID : 8515604 |