【すし手帳】貝 >
あおやぎ


水揚げされると殻がきちんと閉まらず、足をだらしなくべろんと出しているシマらない様子から、つけられた名がバカガイ。だけれど、古くは雅びにミナトガイと呼ばれていたのだから、ご当人(?)としては今の名前は、決して本意ではないだろう。でも、そんな名前だからとバカにされることもなく、むしろ庶民的なすしダネとしてとても人気がある。
親しみを感じさせる味、歯切れ
先端を、ニワトリの尾のようにピンと立てた姿が愛らしい青柳(写真は千葉県産)は、足を握る。さくさくした歯切れのよさとさっぱりした甘さ、豊かな潮の香りが身上だ。
軍艦に握る小柱(同北海道産)は貝柱のこと。貝柱は1個の貝に大小二つついており、写真の小柱は、小柱といいながら大きな柱だけを使っている。むっちり弾むような身は青柳に負けずさくっと歯切れよく、甘さはあっさりと若々しい。
すしダネとしてバカガイより通りがいい青柳の名は、かつて名産地だった上総青柳村(現千葉県市原市)から。また地方名に挙げた「あおやぎ」はむき身、桜貝は身を丸ごと干したもの、姫貝は足を干したものをいう。
![]() | 東京書籍 (著:坂本一男) 「すし手帳」 JLogosID : 8003072 |