ローマ道
【ろーまどう】
すべての道はローマに通ず
先史時代の道は、人々の暮らしの中から自然発生的に生まれたものだが、古代文明が発生し国家が誕生すると、道も計画的につくられるようになった。権力者が支配をより強固なものにするためには、道は不可欠だったのである。
古代の道で、最も大規模で組織的なものとして知られているのが、ローマ帝国が建設した道路網である。「すべての道はローマに通ず」のことわざがあるように、道路網の全長は八万五〇〇〇kmにもおよんだ。日本の高速道路の全長が六四〇〇kmあまりだから、ローマ道がいかにスケールの大きなものであったかがわかるだろう。
ローマ道の特徴は、ある地点と地点を直線、すなわち最短距離で結び、しかも勾配の少ない平坦路を原則としたことだ。平坦で直線的な道路が、効率的にみてもいかに優れていたかを、古代ローマ人は心得ていたのだろう。
ローマ道で最も有名なのが、紀元前三一二年に建設されたというアッピア街道で、道路幅は一五mあまりもあった。しかもただ単に、地面を平坦にならしたという単純なものではなく、現代の舗装道路の原型とでもいえる本格的なものだったという。コンクリートを発明したのは古代ローマ人であった。紀元後四七六年に西ローマ帝国が滅亡してローマ道は荒廃したが、今もローマ郊外にはローマ道の遺跡があり、一部は現在でも使われているというのだから驚かざるをえない。
古代の道はローマ道のほかにも各地にあった。地中海のクレタ島やマルタ島に残る古代道路は、紀元前二〇〇〇年頃のものだというし、古代ペルシャの王道は、メソポタミアから小アジアに至る二五〇〇kmの計画的な道路であった。このように、計画的な道路は古代から既に存在していたのである。
| 日本実業出版社 (著:浅井 建爾) 「道と路がわかる事典」 JLogosID : 5060040 |