大小暦
【だいしょうれき】
江戸時代に流行した大小暦とは?
◆カレンダーが普及していなかった時代の庶民の知恵
「西向くサムライ」とは、大小の月の配列(新暦)の暗記法の1つ。2(に)・4(し)・6(む)・9(く)・11(サムライ)月は小の月と覚えるのである。サムライとは「十一」を武士の「士」にみたてたものだ。こうした暗記法は江戸時代の「大小暦」の流れをくむものである。昔は庶民の間では暦は今日ほど普及していなかった。しかし、太陰太陽暦においては新月が1日、満月が15日とほぼ決まっていたので、その年の大小の月の配列さえ頭に入れれば、暮らしや商売にさしたる支障は生じなかった。そこで、江戸時代になるとさまざまな趣向の大小暦が、庶民の間で使われるようになった。
ただ、江戸時代においては暦の出版は幕府の統制下に置かれていたので、表向きは暦とわからぬような工夫がこらされ、絵がらに大小の配列がこっそりもりこまれた。輪郭の長線が大の月、短線が小の月を表わし(左のすきまから時計回りに)、大小小大小小大小大大大小となる(安永6年の例)。
和歌や言葉にして覚えやすくしたものもある。「にごらぬがすべて大(だい)だよ」というのは傑作の部類。清音を大の月、濁音を小の月としたもので、小大小小大小大小大小大小となる(寛政3年の例)。
| 日本実業出版社 (著:吉岡 安之) 「暦の雑学事典」 JLogosID : 5040048 |